1月のお兄ちゃんは、毎年お年玉をくれる。
ひとまわり年の離れた私を、いつまでもコドモだと思っているのだ。
私はもう、成人と呼ばれる年になったというのに。
2月のお兄ちゃんに、毎年チョコをあげる。
毎年、改めて念を押すように。
私がスキなのは、ずっとお兄ちゃんだけだ、と。
3月のお兄ちゃんの、毎年のお返し。
いつだって決まってマシュマロなんだ。
私のほっぺのようだと、お兄ちゃんが言ったマシュマロ。
4月のお兄ちゃんと、毎年お花見に行くの。
あの日、自転車を押してもらった土手沿いの道を。
5月のお兄ちゃんは、
6月のお兄ちゃん
7月のお兄ちゃ
8月のお兄
9月の
…
ねえお兄ちゃん、私は何も失っていない。
砕けた眼鏡の破片は全て集められなかったけど
今だって、この湯気の向こう
曇ったレンズ越しのお兄ちゃんの目は優しい。
10年前のあの日、私は12人のお兄ちゃんを得た。
私は 何も 失ってはいない。