死と生の狭間で。

>>>ボーダーライン。




昔、つきあっていたひとは、極端に死ぬことを恐れていたように思う。もともと、神経的なものがカラダに出やすいタイプではあったのだけれど、ご家族のひとりをうつ病からの自殺で亡くしてから、自分もそうなるのではという不安が強くなったのではないだろうか。死を望むのではないかという自分への不安。長い間つきあいのあった人だったが、私とのつきあいが切れる頃は、軽度のうつ病と診断され、通院していた。

ご家族が無くなった理由は心不全だと聞いた。自分の病気に関しても、一切本人から聞いたことはなかった。私は知らないことになっていたので、本人とそういう話をすることも一切なかったのだけれど。彼がそれらを隠す話をするとき、否定的な話をするとき、穏やかな口調であっても、にじみ出ていた焦燥を、いつも感じていた。大丈夫だよといいたい気持ちもあったが、彼が私に望んでいたのは、そんな自分を見透かしたよなコトバではない気がして、言わずにいた。

今、つきあいのあるひとが、死にたい、と漏らしたのを聞いたことが今までに2度ある。2回ともかなり酔っていた。最初に聞いた時は結構唐突に言われた。はじめて互いにぽつぽつと、ふたりでまともに話をしていた時だった。俺は、いつも漠然と死にたいと思ってるけどね。その時の彼の表情と、それきり続けられずに宙に浮いたコトバは、今も時折、頭をかすめる。

次に聞いたときは、彼はかなり泥酔していた。妙にテンションが高かった。女の子に絡みまくり、私を連れ出し、その後も誰彼となく話しかけたり場を盛り上げていた。彼がこんなに酔ったのをみたことはなかった。明け方、戸惑ったままの私の側にいた彼は、笑いながら、ふざけた口調のままつぶやきはじめた。あー、酔っちゃったよ。ふらふらだよ。もう駄目だ。吐きたい、死にそう。 てか、死んでもいいや。死にたい。このまま死ぬんだ。俺、中学生の頃から死にたいと思ってる。

彼は睡眠時間が短い。一日2、3時間、長い時でも5時間ほどだ。寝れないの、眠くないの? 寝たくないだけだ。眠る時間がもったいない、と彼は言う。人生の中で睡眠時間を引いたら、生きてる時間なんて短いぞ。短くても濃い時間を過せばいいじゃんと口を挟んだひとに、濃い時間を3時間過すより6時間過したいと思うだろ、と食って掛かるように言い返す彼をみて、その考え方が正しいかどうかはともかく、彼もまた焦っているのだと思った。

眠りは死に近いところにあるのかもしれない。穏やかなタナトスの誘惑。幼い頃、眠りに就く前の時間、いつか来るという死が恐くて怯えていたことを思い出す。死ぬ時のことは死ぬ時に考えればいーや、と思うようになってから、あまり考えることはなくなったのだけど。そんな私は、死にたいと思ったことはないけれど、このまま殺されてもいいなあ。と思ったことはある。生きてるけどね。


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